ヴィパッサナーの10日間

ヴィパッサナー瞑想パンフレット

ヴィパッサナー瞑想10日間コースの生活面についても、
覚え書きとして書いておきます。

●申し込み

私が参加したコースは2013年10月16日(水)~10月27日(日)、
千葉にあるダンマーディッチャ瞑想センターで開催されました。

申し込みは日本ヴィパッサナー協会(JVA)のWebサイトから、
京都・ダンマバーヌ、千葉・ダンマーディッチャそれぞれのページから、
2ヶ月前からオンラインで行います。2週間ほど前に、再確認のメールが
届き、それに返信することで参加の確定を行います。

●交通

10月16日は折りしも台風26号が関東に接近し、前日から暴風雨が
吹き荒れた日でした。千葉・ダンマーディッチャへの最寄り駅は
JR外房線の茂原または上総一ノ宮です。強風に弱い外房線のこと、
運転ダイヤは大幅に乱れていて、茂原駅にたどり着いたら、
利用するように指示されていたバスが運休していました。
バス停で出会った他の参加者の方々とタクシーに乗り合わせて、
ダンマーディッチャに到着した頃には日が暮れていました。

(茂原・都タクシーはダンマーディッチャと契約を結んでいて、
3,300円の定額で行ってもらえます。)

帰りは近くのバス停まで車で送ってもらい、そこからバスで
茂原駅に戻りました。タクシーを呼ぶことも可能です。

●初日(Day 0)の流れ

到着後、食堂で受付用紙に記入し、財布や携帯電話、その他コースには
不要な物品を預けます。簡単な食事(野菜カレーでした)が出された後、
食堂でオリエンテーションが行われました。その後、瞑想ホールで
最初のグループ瞑想と指導がありました。

10月16日開始のコースのでは、台風の影響による交通機関の乱れのため、
遅れて到着する人が多く、かなり遅くなってからの開始で、瞑想の指導が
終わり、就寝できたのは夜11時過ぎになってしまいました。

●聖なる沈黙

ヴィパッサナー瞑想10日間コースでは「聖なる沈黙」といって、
初日(Day 0)のオリエンテーションの後から10日目の朝まで、
参加者は沈黙を守ります。周りに他の参加者がいても、たった一人で
修行しているつもりで過ごします。話すのを許されるのは、
アシスタント・ティーチャーに質問する時、コースマネージャーに
相談事がある時だけに限られます。

この沈黙、私にとってはとても心地良かったです。
修行に集中することができますし、無理に自分を作ったり、
他人に合わせたりする必要がないのは正直言って楽でした。

●時間割

1日目からは以下の時間割に従って、粛々とコースは進められます。
ヴィパッサナー瞑想の指導のある4日目とメッター瞑想の指導のある
10日目は少し違う時間割になっていました。

午前 4:00 起床のベル

4:30 – 6:30 ホールまたは各自の部屋で瞑想

6:30 – 8:00 朝食と休憩

8:00 – 9:00 ホールでグループ瞑想
9:00 – 11:00 ホールまたは各自の部屋で瞑想

11:00 – 1:00 昼食と休憩
午後 12:00 – 12:30 指導者との面談

1:00 – 2:30 ホールまたは各自の部屋で瞑想
2:30 – 3:30 ホールでグループ瞑想
3:30 – 5:00 ホールまたは各自の部屋で瞑想

5:00 – 6:00 お茶と休憩

6:00 – 7:00 ホールでグループ瞑想
7:15 – 8:30 ゴエンカ師の講話
8:30 – 9:00 ホールでグループ瞑想
9:00 – 9:30 ホールで質問の時間

9:30 就寝/消灯

この時間割、Sivananda Yoga TTCと少し似ていて、割りとすぐに
順応することができました。違うのはひたすら瞑想に集中する点です。

夜の講話が終わった後、8:30-9:00の30分間に、瞑想の次のステップへの
具体的な手法が紹介され、翌日1日かけて練習する、といった流れで
進みます。

1日3回あるグループ瞑想の際にはゴエンカ氏によるパーリ語の
チャンティングと瞑想の指導の音声(英語と日本語)が流れます。
このグループ瞑想では1時間の間、できるだけ身動きせず、
するとしても最小限にして座ることを求められます。

「ホールまたは各自の部屋で」の瞑想は言ってみれば「自主練」。
トイレに立ったり水の飲みに行ったりすることが許されています。

1日目から4日目の午後までは「アーナパーナ瞑想」、4日目から9日目
まで「ヴィパッサナー瞑想」を練習し、10日目にそれらに加えて
「メッター」を教わります。

●休憩時間の過ごし方

朝食と昼食、お茶の時間の後の休憩時間中にシャワーや洗濯を
済ませます。女子用のトイレ・シャワー棟にはシャワーが3つ、
トイレが5つあり、空き状況を見計らって順番に使っていました。

洗濯は手洗いで行い、二層式の洗濯機の脱水機能で絞ることが
できました。物干しにはハンガーや小物干し、洗濯バサミが
たくさんあり、自由に使えました。

●食事とお茶

朝食と昼食はセルフ・サービス、早い者順に並んで取る形式でした。
肉魚の入らない菜食で、和風、中華風、カレー、パスタなど毎日違う
メニューが出されました。あとから聞いたところによると、
決まっているのは昼食のメニューだけなんだそうです。
朝食は前日の昼食の残り物や残りゴハンを工夫したお粥などが
出ることが多かったです。味はかなり薄味でした。

私はついSivananda Yoga TTCと比較してしまいますが、ネギが
多用される点、残り物が出される点が違うなーと感じました。

(Swami Sivananda師は修行者はサトヴィックな食べ物を取り、香辛料、
ネギ、ニンニクなどは食べないように指導されています。
また、アーユルヴェーダの観点からすると、残り物はタマスの要素があり、
避けるべきものとされています。)

飲み物は白湯、紅茶、ほうじ茶が用意されていました。インスタント
コーヒー、キビ砂糖、ハチミツ、すりおろしショウガも常備されて
いました。夕方のお茶の時間にはレモンが追加されます。

夕方のお茶の時間では、初参加の「新しい生徒」のみ果物を食べても
よいことになっています。バナナ、リンゴ、柿、キウィ、グレープフルーツ、
オレンジが出ていました。2回目以降の「古い生徒」はお茶だけで
過ごします。お茶に砂糖をたくさん入れている人がいて、空腹だったの
だろうなー、と思いました・・・。

●宿泊

宿泊棟はシングル・ベッドが2列にずらりと並んでいて、ベッドの間隔は
30cmもないくらいでした。

(注:私が参加した2013年以降、女子宿泊棟の新築が行なわれたそうです。)

通路に毛布が積んであり、自由に使えました。トイレ・シャワー棟には
プラスチックの湯たんぽが置いてあり、こちらも自由に使えました。

私は他の人のイビキが聞こえると寝れないタチなので、耳栓を使って
いました。あとから聞くと、寝言、歯ぎしりも激しかったらしいです。

夜中に大きめの地震が起きた時に、動揺したのか「聖なる沈黙」を
破って、私の隣りのベッドの女性が「地震、地震だよね。長いよね。」と
大声で叫び続けました。彼女が余りにも繰り返したせいか、一人だけ
「落ち着こうよ」と返事した人がいましたが、他の人はきっちり沈黙を
守っていたのが物すごくおかしかったです。沈黙が解かれてから、
本人に確かめたところ、覚えがなく寝言だったそうです。それにまた
ビックリ・・・。

●奉仕

コースの運営はアシスタント・ティーチャーはじめ、コースマネージャー、
キッチンのスタッフも全員、無償奉仕のスタッフで行われます。

一度でもコースに参加したことがある人は「古い生徒」になり、
奉仕をすることができます。10日間全部でなくても、部分的に奉仕する
ことも可能だそうです。

スタッフはグループ瞑想だけは参加が義務付けられていて、後は仕事を
しながら、ヴィパッサナーを実践するのだそうです。

●持ち物

恒例!?にて、持ち物リストをまとめました。私個人の経験に基づく
ものですので、ご自分で適宜、アレンジしてください。

ダウンロードはこちら>> ヴィパッサナー瞑想10日間コース持ち物リスト

ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門―豊かな人生の技法

ヴィパッサナー瞑想10日間コース、初参加!

ダンマーディッチャ

ちょうど1ヶ月ほど前になりますが、千葉・ダンマーディッチャにて
ヴィパッサナー瞑想10日間コースに参加しました。

私がこの瞑想コースの存在を初めて知ったのは、10年以上前のこと。
しばらく連絡が取れなかった友人が「京都で瞑想のコースに参加してた。
良かったー」と言っていたのです。その当時はさほど興味も沸かず
それっきりだったのですが、10日間もの長期間のコースの存在に
驚いたのか記憶だけには残っていました。

その後、また別の友人が何度も参加している「古い生徒」なことが
わかったり、ヨガスタジオに通い始めたら参加する人続出だったり・・・。
3年ほど前、坐禅に興味を持ち始めた頃から、自分でも参加したい!と
思うようになりました。

ところが、10日間コースとは言え実は11泊12日間を確保する
必要があり、連休が重なるようなコースは常に満席だったため、
参加したいと思い始めてから3年目でようやく実現しました。

参加しての感想は「自分にとっての最善のタイミングで参加できて、
良かった!」ということです。

ここ数年、ヨーガの学びを深めてきて、今年からはヴェーダーンタも
学んでいます。だからこそ、瞑想の練習に1日10時間取り組む必要性も、
「シーラ」という道徳律を課せられる意味も知的に理解でき、
すんなりと受け入れることができました。

また、最大の収穫は『心の筋トレ』ができたことでした。「心」と
一言で言っても、実は様々な側面、あるいは機能を持っています。
ヴィパッサナーの10日間で培う「心」の筋力は言い替えれば、
集中力、気づく力、洞察力だと、現時点では私は考えています。

音や色、匂いなど感覚に訴えかけてくるものが多い環境で、情報に
あふれた慌しい生活を送りながら、これらの側面を鍛えるのは
至難の技です。日常から隔離された空間で、段階を踏んだ指導を受け、
心の筋力を鍛えることだけに専念できるという意味で、このコースは
最善の選択の一つと言えます。

もちろん、スポーツやプロフェッショナルな仕事についている人には、
瞑想なんてしなくても、心の筋力が高い人もいます。向き不向きも
ありますから、ヴィパッサナー瞑想が万人に勧められるわけでは
ないと思います。また、その人の精神的成長の段階によって、
ヴィパッサナーにはまだ早い、というケースもあり得ます。

さて、ヨーガ的見地から書いてみると、10日間コースでは、
パタンジャリのアシュターンガ(八支則)のステップを
身をもって体験できました(サマーディまで至ってはいませんが)。

ヴィパッサナー瞑想で、アシュターンガに当たるものは、
「3つの訓練」と呼ばれています。

・シーラ=道徳律
・サマーディ=集中力、心の統御
・パンニャー=智恵、心を浄化する洞察力

ざっくりとですが、アシュターンガと3つの訓練を対比してみます:

1.ヤマ(禁戒)=シーラ(道徳律)
2.ニヤマ(勧戒)=シーラ(道徳律)

3.プラーナーヤーマ(呼吸法)=座るための準備
4.アーサナ(坐法)=座るための準備
5.プラティヤハーラ(感覚の制御)=座るための準備

6.ダーラナ(集中)=サマーディ
7.ディヤーナ(瞑想)=サマーディ
8.サマーディ(解脱)=サマーディ

 (サマーディの深い段階)=パンニャー

現時点での浅い理解による暴言として表現してみれば、
アシュターンガ・ヨーガのゴールはほぼヴィパッサナーのゴールに
当てはまる、と言えるかと思います。

個人的には、「ヴェーダーンタの最終目的であるモークシャは、
ヴィパッサナーには存在しないのか?」という疑問が残っています。

この疑問も含め、今後更に実践していくと、もっと色々なことが
見えてくることでしょう。そのためにも、毎日早起きしなくちゃ!

ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門―豊かな人生の技法
ウィリアム・ハート 日本ヴィパッサナー協会
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