「二枚目の名刺」を持つ、生き方

プロボノ」という言葉をメディアで頻繁に見聞きするように
なったのは、おそらくここ1~2年ほどでしょうか。

プロボノは、元々は弁護士などの専門職がその専門知識や
職業能力を活かして、「公共善」(Pro Bono Publico(ラテン語))
のために提供していた無料奉仕活動を指す言葉だそうです。

現在、メディアで使われることが多い「プロボノ」のニュアンスは、
定義がもう少しゆるく、「ビジネスパーソンが仕事で得たスキルや
経験を活かしてNPOなどでボランティア活動すること」を
指していることが多いようです。

また、プロボノと言わず、「プロボラ(プロフェッショナル・ボランティア)」、
「スキル・ボランティア」などと呼んでいる事例も見かけます。

私が社会起業やソーシャル・イノベーションのフィールドで
自分も何か貢献してみたいと考え始めた2007年秋頃には、
まだほとんどプロボノという言葉を日本で見聞きすることが
ありませんでした。

私の場合、どうやったら社会起業家やNPOに関われるか
模索するなかで自分のタイミングとうまく合ったのが、
ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京
パートナーとして参加することでした。

もしあの時、プロボノという選択肢が目の前にあったら、
選んでいたかもしれません。

プロボノという社会への関わり方が短期間にここまで
広まったのは、リーマンショック以降の経済環境の変化や、
社会貢献意識の高まりもありますが、人生を生きる生き方の
ひとつの選択肢として認識されたからではないかと思います。

さて、そんなプロボノをNPOに提供している組織のひとつに、
二枚目の名刺」があります。

一枚目の名刺が本業や本職で持つ名刺だとしたら、
二枚目の名刺は本業と並行して参加する社会活動で持つ
名刺のことであり、そういう生き方をしよう!という
呼びかけでもあります。

(かく言う私は、最多時、4枚の名刺を持っていました。
これはちょっと多過ぎ・・・汗)

二枚目の名刺では、プロボノしたい社会人とプロボノによる
サービスを受けたいNPOをマッチングして、プロジェクト形式
によるサポートを提供しています。

昨年8月頃から、二枚目の名刺のサポートチームの皆さんに、
私が理事になっている海の環境教育NPO bridgeに対して
プロジェクトを実施して頂きました。

サポートを受けてみて気づいたのは、ビジネスパーソンと
NPOパーソンの世界観の違いです。お互いに異なる視点を
持ち、異なる言語を使っているために行き違い、思い違いが
生じる様子を見ていると、通訳か翻訳の必要を感じるほどです
(同じ日本語なのに!)。

ただ、この違いがあるからこそ得られるものは大きいです。
違うからダメと間単に諦めず、ビジネスパーソン、NPOパーソンが
互いに歩み寄り学び合う姿勢を持つことが必要だと思います。

ちょうど今、二枚目の名刺のサポートプロジェクトに参加する
いいチャンス!だそうです。

来週末、2月19日(土)に、東京・下北沢で「コモンルーム」という
イベントが開催されます。二枚目の名刺のメンバーに会えるのは
もちろんのこと、ケーススタディ・セッションやNPO bridgeの
プロジェクト報告も行われます。

何か社会貢献やってみたいーと思っていた方、この機会をお見逃しなく!

詳細・申込みはこちら:二枚目の名刺

いま生きている命を守る

JICA理事長、元国連高等難民弁務官(UNHCR)の
緒方貞子さんのインタビュー番組を見ました。

実は緒方さんは大学の大先輩なのです。同窓生ということも
あって、弁務官に就任された時から、ニュースや新聞で
目にする度に注目してきました。(同窓生ではおそらく二番目に
世界的に有名な方です。一番目は皇后陛下です。)

インタビューでは1991年に弁務官に就任されてから
起こった国際紛争と難民支援の経験を語られましたが、
とりわけ印象深かったのは

「いま生きている人を死なせちゃいけないんです。
死体になったら(死なせてしまっては)意味がないんです。」

という言葉でした。

(注:記憶が曖昧で言葉通り正確ではありませんが、
こういう意味のことをおっしゃっていました。)

難民支援の際、何よりも優先されるのは、人の命なのです。

逃げながら敵対する民族の人々を殺してきたような、
武器を持った兵士であっても、今、難民として目の前で
助けを求めているのなら、その命を救う。生きていけるように
支援する。

人と人が殺し合い憎しみ合った結果、生まれ育った国から
逃れてこなければならなかった難民を救う、
このような人道支援の現場で10年間働いてこられた、
生々しさと重み、そして痛みは、とても私のような者の
想像に及ぶものではないと痛感しました。

インタビューで私が垣間見た、緒方さんの強さは、
今この瞬間に必要なことを現実的に見極め行動してきた
経験と、多くの失敗や後悔から学んだことによる深みが
作ったもののように感じました。

番組を見ながら、ジャン・ピクテの「人道の4つの敵」
思い出しました。


・利己心
・無関心
・認識不足(無知)
・想像力の欠如

この4つの敵はどんなに高邁な人でもその状態に
陥ることがあるものだと思います。

人間どうしの間に起こる争いや対立は、この4つの敵を
私たちが心に持った時、たとえば自らの正当性を
疑うことなく信じ、自分と相手の違いを認めず許さないこと
などをきっかけに起こります。

国家レベルだけでなく、家族とでも、電車でたまたま
乗り合わせたような初めて会った人とでも起こりうることです。

緒方貞子さんを見て、「私はあんなに立派な人じゃないから」と
卑下したり、「能力がないから」と言い訳したところで、
何も始まりません。

まずは、自分の心に「4つの敵」があることに気づくことなら、
誰にでもできるんじゃないでしょうか。

番組を見ながら、私も日々精進しよう!と、思いを新たにしました。