主人公として生きる

「主人公」という言葉の語源って知ってますか?

小説や演劇、映画などの中心人物という意味で
使われている「主人公」、英語で言えばHero、Heroineです。

実は「主人公」という言葉は元々、禅語なんだそうです。
私も「禅、シンプル生活のすすめ」を読んで、初めて
知りました。

瑞巌(ずいがん)和尚、毎日自ら主人公と喚(よ)び、復(ま)た自ら応諾(おうだく)す。及ち云く「惺惺着(せいせいじゃく)や、喏(だく)。他時異日、人の瞞(まん)を受くること莫れ、喏喏(だくだく)」(『無門関』第十二則)

 瑞巌和尚という方は、毎日自分自身に向かって「主人公」と呼びかけ、また自分で「ハイ」と返事をしていました。「はっきりと目を醒ましているか」「ハイ」「これから先も人に騙されなさんなや」「ハイ、ハイ」といって、毎日ひとり言をいっておられたというのです。
臨黄ネットより引用)

五感を通じて受け取る情報も含め、私たちの身の周りには、
情報や刺激にあふれています。一般社会で生きていて、
自分以外の存在や外界からの影響をまったく受けずに
生きるのは困難です。私たちの頭には外界から受け取った
刺激によって引き起こされた様々な思考や感情が
常に行き来しています。

膨大な量のインプットを受け取り続けていたら、
いつしか、本当の自分、本来の「私」というものを
忘れてしまっても無理もないというもの。

瑞巌和尚のように、時々、自分自身の名前を呼ぶ行為は、
自分という存在がほんとうに今ここにいるのか、
その確認のようにも思えます。

よく、コーチングやヒーリングの世界でも、
「自分の人生の『主人公』として生きる」といった
言い方をすることがあります。

それは、自らが自らとして生きること。

このことが意味にする世界の入り口に、今ようやく
たどりついたように思います。

【芋づる式Book List】

禅、シンプル生活のすすめ (知的生きかた文庫)
枡野 俊明
4837977979

「宗教」ってなんだろう?の答え

内山興正老師の「坐禅の意味と実際」を読んだところ、
その序文に、私が疑問に感じていたことの、身も蓋もないくらい
直接的な答えが書いてあり、大笑いしてしまいました。

「たしかに仏教は、日本の過去において、ほんの一握りの
えらばれた人々の中に、深く浸透したことは事実だと思います。
それなればこそ、仏教は現代のわれわれにまで伝えられて
きているのですから。―しかし「日本は過去において仏教国
であった」などと、今の人が考えるほど、真の仏教が日本人
社会全体にひろく普及し、浸透したことは一度もなかったことは
事実です。いやむしろ日本人全体としては、仏教という名のもとに
真実の仏教とはおよそ無関係のことを、あまりにも沢山
行いすぎてきて、ついに仏教そのものとは完全にすれちがって、
出逢わなかったのだといった方があたっているでしょう。」

以上の文章の「仏教」を「神道」に置き換えても、
ほぼ同じことが言えるんじゃないでしょうか。

「なーんだ、日本は『仏教国』なんかじゃなかったんだ!」と
気づいたら、もやもや感が一気に吹っ飛びました。

チベット仏教、テーラワーダ仏教、ティク・ナット・ハン師の
ベトナム禅など、20世紀後半以降に欧米経由で「輸入」
された仏教に人気が集まることも、内山老師はお見通しで、
そのことも序文には書かれていました。

学び始めた今だからこそ言えることですが、一生の間、
仏教あるいは仏道と一度もまともに出会うことなしに、
死んだ後=葬式の時だけ、「ホトケ様」になるなんて、
ものすごーくもったいないことだと思います。

「坐禅の意味と実際」の本そのものは、少々クセのある
文体のため、私にはちょっととっつきにくかったのですが、
「身も蓋もない」くらいの率直さは、坐禅ひとすじに
生きてきた証でもあるように感じ、参考になりました。

【芋づる式Book List】

坐禅の意味と実際―生命の実物を生きる
内山 興正
4804611975