jazzのように生きるにはー『9番目の音を探して』

ジャズを聴いてると予想を軽く裏切られることがよくあります。人生もまた同じ。

何の気なしに手に取った『9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学』。副題に尋常ならぬものを感じて読んでみたら、結構な分厚さなのにやめられないとまらない面白さでした。

この本は大江千里さんがシンガーソングライターとしての二十数年のキャリアを投げ打ち、ニューヨークで留学生として一からジャズを学び直した4年半の壮絶な記録です。

80年代から90年代にかけてヒット曲を連発していた大江さんがジャズピアニストに転身した、ということは新聞で読んで知っていました。こんなふうに書くとたった一行におさまってしまうのが申し訳ないくらいに、その転身の裏には汗と涙と根性と夢にかける情熱がぎっしりと詰まっていたのです。

10代や20代ならエイヤっと飛び込んでしまえるかもしれないけど、40代後半ともなるとそう簡単にはいかない・・・。なんていうわたしの思い込みは良い意味であざやかに裏切られました。もちろん簡単とは言えないまでも、不可能ではないのですね。

地位や名声を得て成功を味わってしまうと挫折や失敗が怖くなります。「ジャズをやってみたい」そんな願いに導かれ、かつてスターだったプライドをかなぐり捨て、基本のキから体に叩き込んだ大江さん。ジャズという瞬間の芸術を奏でるミュージシャン達はこんなにも泥臭く汗みどろの練習を経てきたのかと思うと、尊敬するしかありません。

先生やジャズ仲間との出会いと別れも描かれています。互いに触発され高め合い、時には激しく落ち込み、そうした揺さぶりすらも糧にしていく様には励まされました。

読みながら親近感が湧いたのは、大江さんの愛犬「ぴ」。昔、我が家でも「ピー」という雌のダックスフントを飼ってたのです。同じような名前をつける人がいるとは意外でした(笑)

ジャズをよく知らなくても、この本に紡がれた彼の生き様から教わることは多いはず。一読の価値ありです。

ノートの上のわたし

Notebooks

ここ十数年ほど、スケジュール帳とは別に小ぶりのノートを持ち歩いています。内容は、ふと思いついたこと、ミーティングやセミナーの記録メモ、本の抜き書き、新月の願い事なんかも混ざっています。

最初に持ち始めたのはスウェーデンに短期留学していた頃。日記を毎日つけるほどマメな性格ではないものの、異文化生活の中で感じたことや考えたことを書き留めておくためにノートを探しに行ったことを覚えています。

ノートはその時々に気に入ったものを使ってきた、つもりだったのですが、並べてみたらなんと15冊中9冊がフランスの文具メーカー、クレール・フォンテーヌ製でした。ペンの滑りが良く裏写りの少ない程よい厚みのある紙質が大好きで、浮気してもまた戻ってきてしまうのです。

この数年ほどノートの冊数が少なめです。スマートフォンを使い始めて以来、手軽さを優先してFacebookやEvernoteなどデジタル・メディアに日々の雑感を書いていたからです。

今、このことを後悔しています。過去の人生の記録がスクリーンの向こう側にあり、手元に無いことの頼りなさを感じ始めたのです。

そこで気づいたのはこのノート達がわたしの人生の”証人”だということ。夢や目標、嬉しかったことや悲しかったことを書き付けていたその時どきのわたしがこのノートの上に生きているのです。

デジタルの利便性を理解しつつもその心もとなさに気づいてから、読まれることを目的にしない言葉を、再びノートに綴り始めました。今の、そしてこれからのわたしのために。