JICA理事長、元国連高等難民弁務官(UNHCR)の
緒方貞子さんのインタビュー番組を見ました。
実は緒方さんは大学の大先輩なのです。同窓生ということも
あって、弁務官に就任された時から、ニュースや新聞で
目にする度に注目してきました。(同窓生ではおそらく二番目に
世界的に有名な方です。一番目は皇后陛下です。)
インタビューでは1991年に弁務官に就任されてから
起こった国際紛争と難民支援の経験を語られましたが、
とりわけ印象深かったのは
「いま生きている人を死なせちゃいけないんです。
死体になったら(死なせてしまっては)意味がないんです。」
という言葉でした。
(注:記憶が曖昧で言葉通り正確ではありませんが、
こういう意味のことをおっしゃっていました。)
難民支援の際、何よりも優先されるのは、人の命なのです。
逃げながら敵対する民族の人々を殺してきたような、
武器を持った兵士であっても、今、難民として目の前で
助けを求めているのなら、その命を救う。生きていけるように
支援する。
人と人が殺し合い憎しみ合った結果、生まれ育った国から
逃れてこなければならなかった難民を救う、
このような人道支援の現場で10年間働いてこられた、
生々しさと重み、そして痛みは、とても私のような者の
想像に及ぶものではないと痛感しました。
インタビューで私が垣間見た、緒方さんの強さは、
今この瞬間に必要なことを現実的に見極め行動してきた
経験と、多くの失敗や後悔から学んだことによる深みが
作ったもののように感じました。
番組を見ながら、ジャン・ピクテの「人道の4つの敵」 を
思い出しました。
・利己心
・無関心
・認識不足(無知)
・想像力の欠如
この4つの敵はどんなに高邁な人でもその状態に
陥ることがあるものだと思います。
人間どうしの間に起こる争いや対立は、この4つの敵を
私たちが心に持った時、たとえば自らの正当性を
疑うことなく信じ、自分と相手の違いを認めず許さないこと
などをきっかけに起こります。
国家レベルだけでなく、家族とでも、電車でたまたま
乗り合わせたような初めて会った人とでも起こりうることです。
緒方貞子さんを見て、「私はあんなに立派な人じゃないから」と
卑下したり、「能力がないから」と言い訳したところで、
何も始まりません。
まずは、自分の心に「4つの敵」があることに気づくことなら、
誰にでもできるんじゃないでしょうか。
番組を見ながら、私も日々精進しよう!と、思いを新たにしました。