乗るつもりだったバスの後ろすがたを呆然と見送り、
バス停で次のバスを待っていた。
じりじりと照りつける日ざしを日傘で防ぎつつ、
空を見上げた。夏の雲が青空をさまざまな形に
型抜きしていた。
雲間に、チラチラ、ハラハラと動くものがある。
よく見ると、それは二匹の蝶だった。
つがいなのだろうか、二匹は追いつ追われつ、
高く高く舞い上がっていく。
濃茶色に生い茂った桜の木よりも、
二階建ての保育園よりも、
高く、高く。
そのうち、蝶は風に流され、羽ばたきながら、
遠ざかっていった。
一夏限りに違いない、二匹の蝶の恋が成就することを、
汗ばみながら願った午後だった。